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  1. 7/28-29

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    レポート:「里山のある町角in宇刈」説明会/緑の学校イントロダクション

    7/28(日)、里山のあるまち角in宇刈プレゼン会、翌29(月)に緑の学校イントロダクションが開催されました。

    28日のプレゼン会は、出展9社の関係者やお客様、また、宇刈プロジェクトや緑の学校に関心のある工務店、設計事務所など、約30名が集まり、実際のエンドユーザー向けのプレゼン会の模擬の会という形で行いました。

    参加者はJR掛川駅に集合し、バスでプレゼン会の会場である月見の里へ向かいます。月見の里にてマイカーでお集まりいただいた参加者を乗せ、まずは宇刈の現場の見学を行いました。まだ造成前の草ぼうぼうの現場でしたが、将来車道や歩道となる部分が刈り込まれた状態になっていて、あらかじめ配られていたリーフレットの完成予想図と見比べながら、参加者は近い将来の景観を想像されているようでした。

    当日は浜松の最高気温40℃が予想されていた日で、バスからの移動を含め、熱中症の危険度が高かったため、予定よりも早く見学を切り上げ、バスに戻ることにしました。短い時間とはいえ、着工前の現場を目に焼き付けることができて良かったと思います。

    プレゼン会の会場である月見の里に戻り、関係者によるこのプロジェクトのあらましや具体的な計画の概要が説明されました。造居の小澤社長から出展9社を代表してあいさつが述べられ、続いてプロジェクト全体のプロデューサーを務めている手の物語・小池よりこの計画の趣旨などが述べられました。歩車分離、コモン、里山など、一般的な区割りとは全く異なるこの計画の意味や価値について語られました。

    続いて、働き方研究家の西村さん、宇刈の植栽を担当するユニットタネの鎌田さん、そして、ランドスケープを田瀬さんとともに担当されてきた竹林さん、建築面の全体監修を担当しているアトリエ樫の坂田さんから計画の全体像について解説が行われました。最後に出展9社から一社5分ずつ自社や計画物件のPRが行われ、1日目のプレゼン会が終了しました。

    終了後は一旦ホテルにてチェックインを済ませ、交流会の会場へ向かいました。交流会では昼間の話をそれぞれが意見を交換しながら反芻し、このプロジェクトの価値や意味についてあらためて掘り下げることができたようでした。

     

    翌29日は、10月からの開校を予定している「緑の学校」のイントロダクションが行われました。

    まずは小池から緑の学校に取り組む意味について語られ、記念講演では日大で生物資源科学部で教鞭を執られている大澤先生より里山や生物多様性の価値、生態系サービスについてお話を伺いました。開発を攪乱と位置付け、自然の中に人間の居場所を見出してくれる里山という場所が、私たちにとって何か救いの場所なんだと感じたのは私だけではなかったのではないでしょうか。

    続いての講義は前日に引き続いて、西村さん、鎌田さん、竹林さんからのお話でした。西村さんと鎌田さんからは、主に徳島県は神山町の町営住宅のプロジェクトを事例に田瀬さんのランドスケープの考え方やそこから生まれるコモンやコミュニティの場の作用について語られました。住民が生き生きと暮らせる場として、ランドスケープが果たす役割は決して小さくないことを感じることができました。

    また、竹林さんからは田瀬さんが手掛けられたアクロス福岡について、また、田瀬さんの近作である香川県大串半島の施設「時の納屋」の仕事についてご紹介いただきました。

    最後に鎌田さんから緑の学校の構想について発表があり、どんぐりが落ちる10月頃に第一回目を開催し、全4回の講義とワークショップを通じて、工務店や設計事務所、あるいは住まい手自身が地元のDNAを持った植物の生産や植栽に関わることができる道筋を示されました。

    田瀬さんは、住宅の多くが新建材で建てられているのと同じように、公園や庭の植物もほとんどが流通している植物によって作られていると語っていました。地域の材料で家を作るのと同じく、地域工務店が作る家の庭は地元のDNAを持つ植物によって作られるべきです。そして、それが生き物たちの生きていく環境をつくり、豊かな生態系を守っていくことにつながります。何より、その地域らしい景観を維持し、良好なコミュニティを誘発することになるのです。

    地域性こそ豊かさなのです。宇刈のプロジェクトや緑の学校は、真に地域に必要とされる工務店の生き方を学ぶ取り組みなのです。

     

    以下、参加者の声

    ・西村さんのお話は、一般のお客様にも響く内容だと思いました。

    ・一坪里山や一坪キッチンガーデンの外構コードをつくりたい。

    ・会を重ねるごとに出展9社の団結力が強まっている感じがした。

    ・大澤先生のお話から、植生について体系的に学べた気がします。

    ・宇刈の里山の完成が楽しみです。

    ・メンテフリーに魅力的な空間はないというお話、良かったです。

    ・工務店だけでなく、建築家や造園家が関わることの重要性を再認識しました。

    ・田瀬さんの同じものを繰り返し作ればよいという言葉に惹かれました。

    ・大澤先生の中規模攪乱という考え方が新鮮でした。

    ・敷地のボリューム感とともに、出展9社の仲の良さが伝わりました。

    ・里山の歴史のお話し、とても楽しいお話でした。

    ・建築家なしの建築という言葉がとても印象に残りました。

    ・9社それぞれが覚悟を持った挑戦であることを知り、良い事例になってほしい。

    ・農村ランドスケープについて、きちんと学べて良かったです。

    ・今回、いろいろとヒントをいただきました。できることから試してみたいと思います。

  2. 里山のある町角 in 宇刈

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    里山のある町角 in 袋井 宇刈 分譲計画はじまります

    袋井の市街から少しだけの郊外、宇刈という場所で、

    里山のふもとに9軒の家ができます。

    里山のある町角 in 袋井 宇刈 分譲計画はじまります

    ※画像の建物はイメージです。


    【最新記事 2024.7.31】

     


    「里山のある町角」とは?

    コモンや里山のある住まいのあり方

    郊外の住宅団地というと、全国チェーンのロードサイド店が立ち並ぶ高規格道路が通り、大型ショッピングモールに隣接した大規模な住宅街を想像される方も多いのではないでしょうか。一様に平らに整地された地形、または、きれいなひな壇に造成された地形がつくられ、個々の区割りは短冊形にほぼ均等に区切られており、建物は道路に正対して配置され、道路側には車が2,3台停めることができるようになっています。
    歩道を歩いていると常に目に入ってくるのは車です。建物は駐車場を除いた敷地いっぱいに建てられ、外構はメンテナンスが容易なように、アルミ製のカーポートや門扉、コンクリートブロックなど主に無機的な素材でつくられています。隣家とはアルミ製の柵で明確に区切られます。

    それに対してこのまちは、車歩は分離され、駐車場は道路から奥まったところにまとめて停める形となっており、車と各戸は少し離れています。住人は道路から歩道を歩いて各戸に入るか、駐車場から歩道を経由して自分の家に向かいます。

    元の地形を生かした、なだらかな斜面の上に個々の住宅が建てられ、外構はすべて緑でつくられています。隣家との境界は曖昧で、まるで隣のお庭も自分の庭のようです。敷地の真ん中には大きなコモンスペースが広がり、子どもたちは安心して外で遊ぶことができます。さらに背後の山もこのまちの住人共有の里山です。

    さあ、このまちでどんな暮らしができるのか、あなたの想像力を思いっ切り働かせて、自分たち家族の暮らしを想い描いてみてください。

     

    住まうこと自体が歓びになる、まちへ。

    計画前の宇刈の敷地、そこにある里山を思わず見上げてしまう。

     


    【この “町角” の作り手:出展工務店の紹介】

    木の家にこだわるアトリエ型の工務店9社が里山のある町角をつくります。

    家作は、住み心地よく、
    質実で、清らかな家に。

    以上の工務店は、ハウスメーカーが作る家と異なり、木が持つ素材性と、その質感と、その架構が持つ美しさをカタチにできるアトリエ工務店です。
    この宇刈という場所にふさわしいお家を作るにあたり、9社の工務店は設計ルールとして「五つの原則」を掲げています。

     

    1. 自然(Nature)であること:
      ナチュラルではなく大文字のネーチャー。

    2. 単純(Simple) であること:
      すべてを取り去ったときに残る本質と原理が日本の家の魅力。

    3. 直截(Direct) であること:
      簡素で飾りがなくて明快な家。自然は人工よりも美しい。簡素と軽快は複雑よりも美しい。節約は浪費よりも美しい。

    4. 正直(Honest)であること:
      正直で、律義で、理屈を持っている家。

    5. 経済的 (Economy)であること:
      経済性とは安くつくることでなく、何事もムダにしないこと、本質を極めること。

     

    世代を超えて長く生き続ける住まいに。

    設計 施工 / 入政建築

    現在の統計を見ると、1人、2人、3人までの家族数が、全世帯の8割を占めるようになりました。家族構成は夫婦のみ、夫婦に未婚の子どもなど様々ですが、小家族化の進行は避けられない状況です。

    ついこの間まで、家は家族が住み続けることを前提にプランが練られていました。

    ですが、大きくなった子どもが就職のため家を離れて戻って来なくなり、長男なのに結婚相手の家に入ったりするなど、家族の形に変容が生じています。

    家づくりもかつては同居家族を対象にしたプランが基本でしたが、少数構成となった家族形態に合わせて、規模は小さくても丁度良く住める家が増えてきています。細々とした小部屋ばかりの間取りを減らし、勉強スペースや書斎を共有化して抑え、オープンネスなリビングと繋げることで、広く大きく住めるプランが好まれています。

    最近「長期優良住宅制度」を利用して家を建てる人が多く、宇刈もこの制度を採用しています。この「長期優良住宅制度」は、家の値打ちが保持されれば、変化への対応が利きます。

    不動産鑑定では木造の家は建築後20年を経ると建物としての評価はゼロになりますが、この制度では鑑定の時点で性能評価を受けられるため、耐震・省エネなどの性能による市場評価が得られます。つまりこの制度は財産保持の制度でもあるということです。

    子どもが独立した後、やがて連れ添いが亡くなって一人家族となったとき、長く住んできた家をどうするか? こうした節目においての選択肢を持ち易くなります。

    その家は終になる家でもあるから、悠々として住める家でもありたい。このプロジェクトはそんな住まいを提供できる場でもあります。

     

     

    お庭で季節を過ごしやすくする仕掛け

    緑の雲とは、ここでは庭に植える木のことを指します。でも単に植えるものではなく、リビングの大きな窓の付近に日差しの向きなども考えながら植える。そうすることで、夏は緑葉が暑い日差しを遮り、冬に葉が落ちたら太陽の光が窓から家に差し込むようになります。太陽の光は家の中の空気をホンワカと暖かくしてくれる。

    この場所での家づくり、庭づくりは、エアコン以外の方法でも季節を過ごしやすくするための仕掛けを多く採用します。

    開口部の傍に寄り添うように茂る “緑の雲”。夏の日差しを遮ってくれるだけで、その違いは明らかです。 (画像:建築家 永田昌民さんの自邸)

     

     


    2025年、里山のふもとはこんな場所になります。

    計画地を見ながら、ぐるり散歩してみる。

    市道から見ると左側に10本ほどの栗の並木が見える。栗の木は四季の顔を持っている。葉が茂る夏は並木の向こうの家は見えない。けれど収穫の秋になると栗の木はイガグリの実を落とし、木枯らしが吹くようになると木立の向こうに木の家が顔を見せます。

    大きなコモン(自由広場)に通じる真ん中の道は、後ろの里山を背にコモンが広がっています。電線は土の中なので、電柱も電線もなく家々の輪郭がすっきりし、コモンから栗並木に通じる上の散歩道は道幅を広くしています。そこには木陰のベンチがあって、本読んだり、編み物したり、お喋りしたりできます。ぐるっと回って感じるのは、それぞれに居場所が持てるということです。それは敷地のそこここに巧みにアルコーブ(凹みや影など)が配されているため、このたくらみの妙が利いているからです。

     

     

    家並は土地の形状にしたがう。

    京都の八坂神社から清水寺に向かう道に三寧坂と名付けられている有名な場所があります。下から眺めてみると、屋根の高さはバラバラだけど、土地の形状にしたがっています。ムリがありません。プロポーションが保たれています。

    宇刈の土地も、三寧坂ほど急ではありませんが、後背に山から傾斜する高低差があり、この高低差は微妙に複雑です。それがどんな屋根の連なりを生むのかとても楽しみ。屋根の連なりだけでなく、地べたの植栽工事もしたがわなければならず、足元を照らす夜の灯りも俎上に上げています。

    敷地模型の接写。三寧坂のように、下から眺めてみると良質な町角としての景観が見えてきます。

     

     

    共有ゾーンにつくられたコモンと散歩道。

    ここの住人の一軒あたりの土地面積は平均340㎡(103坪)。宅地だけだと平均240㎡(73坪)。そして余剰の面積が住まい手の方たちが共有する場所、すなわち”コモン”です。コモンはこの敷地計画において建てられる9軒の住宅の中心に位置しています。

    古来、日本は土地を「一所懸命」の所産としてきました。武士は屋敷を塀で囲い、今のそれは狭い土地を、殊更狭くしているここに郊外の短冊型住宅地において3軒の敷地を一つにまとめ、緑の空間に変えたという事例があります。異形ではありますが、この宇刈の計画も、それと似た性質をしています。

    現代日本の郊外居住は「ベッドタウン–寝に帰る街」と呼ばれてきました。私たちは「コモンのまち」に切り替えることで、住むこと自体を歓びに高めたい。このことに最初に気づくのは、コモンで無邪気に遊ぶ子ども達なのかもしれません。

    敷地の中央に位置する共有地(コモン)とその外周を巡ることができる散歩道。住まい手同士が交流し、日々の生活を織る中心の場となります。

     

     

    歩車分離。ヨーロッパでは、常識になった。

    「地上に人間が住んで以来、今世紀ほど地球が征服されたためしはかつてない。まもなく地球は、いそがしくぶんぶん飛び回る虫のような、一億台からの自動車をしょいこむことになるであろう」1960年代の初頭にヘルマン・シュライバーが『道の文化史』に書いた言葉です。現在、世界の車の保有台数は15億台を超え2040年には40億台に達すると言います。

    かつて冬の寒空でも元気に遊ぶ子どもたちは”風の子”と呼ばれていましたが、最近では久しく聞かない言葉です。ついこの間まで、道端は子どもの遊び場だったはずですが、車の往来が当然となっている現在では、安全に集える場所ではなくなってしまいました。でも、人と車が少し距離を置ける環境があれば、そこは子どもや大人が気軽にくつろげる場所として機能するようになります。

    この歩車分離は、現在ヨーロッパのオランダやベルギー、ドイツでもまちづくりの基本となっています。それは不便だ、という人もいますが、この場所においては、「少しの不便と引き換えに、大きな幸せを生むこと」を優先させています。

    駐車場からコモンを巡りながら、家までの道を歩いていく。クルマからほんの少し距離を置くことで、”より自由な住み方”を得ることができます。

     

     


    楽しめる里山ゾーンに。

    人は弥生時代に入り、谷状の場所を利用してお米をつくるようになりました。それまで居住と食の採集の場だった山は、燃料となる薪や畑の肥料、建築材を調達するようになり、相互の慣例として入会(いりあい)を認め合い、里山として保持されるようになったといいます。

    里山にある広葉樹林は、根を残して伐採され、薪や木炭に利用されました。残された根から再び芽が出て、循環運用される森として生かされました。こうして弥生時代以降の稲作を中心とする農耕生活は、里山に依存して維持されるようになりました。

    宇刈の土地の後背に位置する里山は入会(いりあい)の約束事を決め、利用の仕方を住民みんなで編み出していただくことになります。

    たとえば敷地にツリーハウスを作ったり、木陰に椎茸栽培の原木を並べたりすることができます。また大きなコモンと接している場所には、孟宗竹の竹林があるので、そこから筍を堀り出すことだってできます。季節の折々で楽しみ方が変わる里山のある町角。ハイキング用の道は整備されていませんが、そこを人が通れることで、アクセスできるルートが自然に出来上がります。

    宇刈の里山を少し登った場所から。

     

    自生種を探る。

    敷地周辺を巡って見つけた自生種。こうした調査も、プロジェクトにおいて重要なファクトを占めています。

    この「里山のある町角」の計画では、敷地内を彩る植物そのものにも注力しています。かつての野には緑の自生種があり、原っぱや路傍に咲いていましたが、やがて外来種が混じるようになり、雑多な自然環境が溢れるようになりました。ここで注目したいのは生物多様性です。在来種の野草が育てば、土地の虫や鳥も来るようになります。

    一般に生物多様性が充実した環境は私たちに様々な恩恵をもたらしてくれるものですが、こうしてその土地独自の環境のサイクルが自然と形成されていくのを生活の合間に眺めることができるのも、この場所の大きな魅力の一つです。

    ただし、その土地の自生種は花屋さんや植木屋さんで売っているものではありません。現時点では自ら採取し育てる必要があります。さあ、ここをどうしていこうか? そんな目的も計画に織り込みながら、まずはその土地の自生種を探すところから始めています。

     

     

     


    【この場所の始まり】

    ぼくらは、2020年10月7日、この地に立った。

    この土地を見つけたのは、この土地の売却を数年前から依頼されていた地元袋井市の工務店、造居の小澤典良だった。30年も塩漬けになっていて、動かない土地だけど、と小澤さんはおずおずと言った。だけど不思議な魅力があるんですよ、と。

    計画に人を得ることですね、と私は言った。頭にあったのは、田瀬理夫だった。私は、田瀬に電話を入れた。「土地を見ないと何とも言えない」と素っ気なかった。

    宇刈にやってきた田瀬は、いつものように矯めつ眇めつ土地に見入り、荒れている山中にも足を踏み入れ、ぬうーと出てきたかと思うと山を振り返り見て、「規模は小さいけど、スイスでアトリエ5がやったハーレン・ジードルンクの土地に似ている」 と言った。しばらくしてプランが届いた。これまで見たことのないまちが描かれていた。

    あれから4年、いくつものハードルを超え、今ようやく実行に向けて動き出した。感慨ひとしおである。

    (総合プロデュサー 小池一三)

    200分の1の縮尺で制作された敷地の模型。工務店同士によるミーティングを重ねながら、完成へと向かっていきます。

     


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